こうの漫画を読んでいて、ふと気づくのですが、彼女の漫画には、1冊も似た作品がありません。
そしてまた、ふと気づいて驚くのですが、こうのさんの描く漫画は、いつも、ほとんど同じタッチで描かれています。
これが漫画だよな、と思わせる、読者をほっとさせる、あの愛らしいタッチのことです。
4コマ漫画でも、ほのぼのショートストーリーでも、神話ものでも、戦争ものでも、あの絵柄で一貫して描いてあります。戦争ものだから、急にシリアスな絵柄で、とはなりません。
古代や現代、戦争や平和、動物や人間、どんなに世界が違っても、毎日が必ず続いていく、かけがえのない時間が流れている。こうのさんの描く漫画を通じて、読者はそう感じることができます。
こうの史代は、まだ漫画になってないこと、誰も手掛けてないこと、手薄なところを探して漫画にしていく、漫画の世界の冒険家です。
だから読者は、彼女の漫画を読むたびに、こんな世界知らなかった!と、いつも思うのでしょう。
そして、そんな読者に、彼女は、漫画の中から、こう呼びかけているようです。
見慣れたはずの「漫画」という表現が、新鮮な姿に見えてきたでしょ? ほら、まだこんなに描くことがあるよ、君もこっちに来ない?
1人の漫画家として、こうの史代が歩いてきたすべての道のりを、この展覧会ではたどります。過去の作品だけじゃありません。昨年、そして今年になって描き始めた作品の原画もできる限り展示します。現在進行形の、私達の同時代を生きる漫画家の姿をぜひ体感してほしいと思います。
姫路文学館では、会場の広さの都合から、前期と後期で、ほとんどの作品を展示替する予定です。
見ていただくには、少し面倒をかけてしまいます。
でも、この姫路文学館から初めて展示される原画の展示もあります。
前期後期、どちらを見てくださっても、充実の内容です!(もちろん、両方見ていただくのもうれしいです!)。楽しみに待っていてくださいね。
福永信(本展監修者/小説家)

